基研研究会・iTHEMS研究会 2022「格子上の場の理論と連続空間上の場の理論」参加報告(理論物理学研究室 湯本純)

博士後期課程2年の湯本です。標記の研究会にて「グラフ理論と位相不変量に基づくdoublerの最大個数についての考察」というタイトルで口頭発表を行いました。

 当研究会は、格子上の場の理論に関する近年の理論的進展を主たるテーマとして、格子上の場の理論と連続時空上の場の理論の関係を理解することを目的に企画された研究会となります。開催日程は7/19-22の4日間で、対面で行われました。
https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~lattice-qft2022/home.html

発表概要については以下の通りとなります。
 格子ゲージ理論において、ダブリング問題はNielsen・二宮のno-go定理により定式化されている。しかし、離散化された一般次元多様体上におけるfermion自由度(doubler)の最大個数は、このno-go定理では説明することができない。したがって、離散化された一般次元多様体上におけるdoublerの最大個数について言及する新たな定理の構成が必要不可欠となった。この新たな定理の構成に向けた議論として、今回の発表では、(1)グラフ理論から着想を得た新たな格子Dirac演算子の解析方法、及びdoublerの個数が格子Dirac演算子の退化次数であることを説明する。(2)位相不変量であるBetti数に着目した新たな定理の予想とその考察について議論していく。

数理科学コースの4年次 伊藤ゆきのさんが10月17日から中欧のスロバキア(Comenius University)における留学を開始しました。

数理科学コースの4年次 伊藤ゆきのさん(山村・Fazekas 研究室)が理工学部の留学プログラム「グローバルイノベータ育成プログラム」に参加して10月17日から2023年1月中旬まで中央ヨーロッパのスロバキア(Comenius University, Faculty of Mathematics, Physics and Informatics)における留学に出発しました。
伊藤さんはスロバキアのブラチスラヴァに3か月滞在してデータサイエンスコースの授業科目を英語で受講して、伊藤さん自身のデータサイエンスに関する研究を進める計画です。研究活動のみならず、現地の友人を作りヨーロッパの文化を学んでさまざまな経験を積んで成長してくれると考えています。


 
 

数理科学コースの4年次 佐藤龍之介さんが6月から北米のカナダ(Memorial University of Newfoundland)における留学を開始しました。

数理科学コースの4年次 佐藤龍之介さん(山村・Fazekas 研究室)が秋田大学の派遣交換留学プログラムに参加して6月から2023年5月まで北米のカナダ(Memorial University of Newfoundland)における留学に参加しています。
佐藤さんはカナダのセントジョンズに約1年滞在してコンピュータサイエンスの授業科目を英語で受講する計画です。
勉強の他にも大学の寮のイベント(サバイバルゲーム)に参加したり、友人と共に1762年9月15日にイギリス兵がフランス兵を制圧したことがきっかけでフランスがイギリスに降伏した場所としても有名な名所の一つのSignal Hill National Historic Siteを訪れたりしています。


 

河上肇教授が出前講義を行いました

秋田県立大館国際情報学院高等学校1年生を対象に、「データサイエンス,AI,数学」と言うタイトルで出前講義を行いました。

日時: 2022年10月13日(木)15:10-16:00
対象: 1年普通科デジタル探究コース選択者
場所: オンラインで実施
 

講演会(6月9日13:00)のお知らせ

6月9日13:00から英国から研究活動のため訪問しているCarl-Fredrik Nyberg Broddaさんの
講演を行います。学術的な話ではなく、スウェーデンと英国の数学教育や数学の研究、留学
などについて一般的な事柄についてお話ししていただきます。ぜひご参加ください。

 日時:6月9日(木)13:00(1時間程度)
 場所:総合研究棟1階教室
 講演者:Carl-Fredrik Nyberg Brodda(マンチェスター大学、英国)

 

令和3年度成績優秀者表彰

令和3年度の成績優秀者を次の通り表彰しました(以下、学籍番号順、敬称略)。

北光会賞受賞

  • 4年次 深浦 晴輝

 北光会賞受賞者は、成績が優秀だった4年生の中からコース推薦された学生です。

数理科学コース成績優秀者

  • 4年次 深浦 晴輝
  • 2年次 齊藤 祐吾

数理科学コースでは毎年度、2年次および4年次の後期までの通算成績が優秀だった学生が成績優秀者として表彰され、次年度の在学生ガイダンスの際に表彰状と副賞が贈られます(4年次生が就職または他大学院へ進学の場合は年度末に贈呈)。

各位のさらなるご健闘を祈ります。

 

今野咲彩さん、田口輝希さん、黄新昊さん、深浦晴輝さん(山村・Fazekas 研究室)が研究発表をおこないました

山村・Fazekas 研究室の今野咲彩さん(M2)、田口輝希さん(M1)、黄新昊さん(M1)、深浦晴輝さん(B4)が、2022年2月16,17,18日に京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「論理・代数系・言語と計算機科学の周辺領域」にて研究発表を行いました。
それぞれの研究成果を発表し、他大学の研究者とともに意見交換を行いました。

今野咲彩さんは、「Left simple and left cancellative semigroups without idempotents」のタイトルで英語で発表を行いました。

発表の概略:
Left simpleでleft cancellative(right simpleかつright cancellative)な半群の構造はまだ明らかになっていないという事実を受け、その性質を持つ半群を構成しました。全射で任意の逆像の濃度が無限濃度となる写像を元とするidempotentを持たない半群を構成し、それがLeft simpleでleft cancellativeであることを発表しました。1932年にR.BaerとF.Leviが、単射の写像を元とするidempotentを持たない半群(Baer-Levi半群)を構成しており、それと同型であるかどうかの確認が現在直面している困難となっています。

田口輝希さんは、「Correspondence between down-up alternating permutations and increasing 1-2 trees」のタイトルで発表を行いました。

発表の概略:
encoding sequenceを用いたdown-up alternating permutationとincreasing 1-2 treeの対応関係の証明や具体例、アルゴリズムを、Euler number、Entringer number、Entringer familyとの関係を交えつつ紹介した。また、そこから発展するこれからの研究目標も紹介した。

黄新昊さんは、「Slightly Improved Dynamic Algorithm for LIS」のタイトルで発表を行いました。

発表の概略:
今回のRIMSで最長増加部分列に対する近似アルゴリズムをテーマに発表しました。LIS問題とDynamic Settingの定義から、既存の近似アルゴリズムと近似問題Extended Grid Packing問題を紹介し、新たな近似度が高い方法を導入しました。そして、再帰的データ構造を用いてLISの近似解を計算します。これからは、新しい方法についてのUpdate Timeなどを確認して、アルゴリズムを練り直します。

深浦晴輝さんは、「Diagrams over groups and small cancellation conditions」のタイトルで発表を行いました。

発表の概略:
発表の内容は、Ol’shanskii著, Geometry of Defining Relations in Groupsの最初の方をまとめたものである。最初に帰結の導出の可視化であるdiagramの例を挙げて定義を述べたあと、帰結とdiagram の対応を述べたvan Kampenの補題を紹介した。次に表示の制限であるスモールキャンセル条件を導入し、それがdiagramにどう作用するかを説明し、ある程度強い条件満たすときのdiagramの特徴を述べた定理の証明を簡単に紹介した。最後に群のword problemを紹介し、スモールキャンセル群のword problemを解くDehnのアルゴリズムを構成した。

参加・研究発表の感想:
今野咲彩
私は学会で数学の内容を発表したことは初めてで、研究者の方々に向かって発表するのはとても緊張しました。毎日の活動では現在直面している困難にばかり目を向けていましたが、発表を通して研究の出発点に目を向ける必要性を感じました。そもそもなぜLeft simpleでleft cancellativeな半群の構造は研究されてこなかったのか、構成したものは予想と照らしてどうだったのか、idempotentがあるとどうなるのかなどの質問を受けました。研究の土台や基礎の部分に目を向けて修士論文を書き上げたいと思いました。発表者の中で、自分が留学に行った際にお世話になった先生や、秋田に留学しに来ていた方もおり、研究集会の中で交流ができたことや、半群論に関する研究発表を聞いて理解できる部分があったことは嬉しかったです。
田口輝希
発表した感想としては、初めての研究発表、それもオンラインということで、スライドの準備や表現、時間の調整や発表練習もとても大変で本番も緊張したが、いい経験になった。発表時間に対し内容を詰め込みすぎてしまったので、次回の研究発表の際はその点に気を付けたい。他の発表者の講演を聞いた感想については、自分の理解できる内容、複雑な内容等様々だったが、全体を通して発表そのものの流れやスライドの作り方などの参考になる部分が多く、これからの発表で取り入れていきたいと思った。今回は日本語での発表になったが、英語での言い回しや表現を学び、次回は英語で発表ができるように努力したいと思う。
黄新昊
初めてRIMS共同研究に参加しましたので、論理・代数系の発表を伺うことができ、大変勉強になった。この発表を通して、限られた時間の中で自身の研究成果を他者に分かりやすく説明することの難しさを実感することができ、とても良い経験になったと思います。また、他の人の発表や質問からで自分にはない考えを得ることができたことも、見つかったことも大きな成果だったと思います。
今後ともこの貴重な場に参加できるよう研究に励み、自分の説明能力を上昇し、そして、様々な考えや意見をいただいたことが発表会での大きな収穫でありました。
深浦晴輝
今回の発表は自分にとって初めての学術発表であり、大変多くのことを学ばせていただきました。発表後、スライド内の図について質問を頂きました。図の制作には力を入れていたので、触れていただけて嬉しかったです。同じ本を読んだという方からは、より深い内容で補足のコメントを頂き、非常に勉強になりました。他の方の発表では、数名がword problemについて触れていました。自分が学んでいる内容が実際に有名なものであることが実感でき、全く異なるアプローチを知ることができて理解を深めることができました。今読んでいる本の内容を今後研究していく上で、大きなモチベーションとなりました。今回、このような貴重な体験をさせていただけたことを感謝しております。

オンライン留学(国立台湾大学)報告(山村研究室 佐藤優樹)

2021年12月にNational Taiwan University(国立台湾大学)主催のオンライン講座(Fundamentals and Applications of AI Online Program)に今野咲彩さん、深浦晴輝さん、佐藤龍之介さん、清水康平さん、田口輝希さんと参加しました。オンデマンド型の講義で、AIについて学びました。
基礎理論から始まり、現在注目されている画像生成などの応用例について知ることができました。また実社会での応用としてドローンの自動操縦、建築現場での安全検査へのAI応用を学ぶことができました。オンデマンド型ということもあり、英語が苦手な僕でも何回か見直すことで問題なく受講することができました。英語はもちろんのことAIの知識も含めて、研究活動や就職活動に活かせる貴重な経験ができました。

佐藤優樹

 

 

「奥羽越素粒子研究会」参加報告(理論物理学研究室 湯本純)

標記の研究会にて、同研究室の湯川大地(博士前期課程2年)君と私、湯本(博士後期課程1年)が口頭発表を行いました。
今回は昨今の状況を踏まえ、2021/11/27-28にオンライン上での開催となりました。当研究会にて、湯川君は「基本表現と随伴表現を含む$R^{3} \times S^{1}$上の$SU(3)$ゲージ理論の閉じ込め相転移」、私は「グラフ理論に基づいた格子Dirac演算子の新たな解析法と$S^{4}$上における格子fermionの解析」というタイトルで発表しました。

研究会参加の所感【湯川君】

今回、初めて研究会で発表させていただきました。この研究会には昨年も参加させていただきましたが、その際には聴講のみでした。昨年は多くの方の講義や研究発表を受けて、様々な知見を得ることができました。
今年は、同世代の学生と研究発表を通じて関わることができたことで、昨年とは違った感想を持ちました。私が調べていることに関わる研究発表もあり、自分の専門について知見を深める機会になりました。同じような分野を学んでいる同期が学内にはいなかったため、発表を聞き、とても刺激を受けることができました。修士論文の作成に向けて、以前よりも前向きな姿勢で行っていこうと思います。

研究会参加の所感【湯本】

この度の研究会に於いては、今年度の前半期で発表していた内容(グラフ理論に基づく格子Dirac演算子の解析法)に加え、新たに得られた結果(4次元球面上の格子fermionの解析結果)も発表しました。質疑応答の際に、本研究の核心となる部分に関する質問や技術的な部分に関する質問を頂いたことで、改めて自身の研究を俯瞰し、横たわっている課題の根幹を再認識しました。さらに発表に際しての改善点を浮き彫りにすることができ、私にとって有意義な研究会となりました。