今野咲彩さん、田口輝希さん、黄新昊さん、深浦晴輝さん(山村・Fazekas 研究室)が研究発表をおこないました

山村・Fazekas 研究室の今野咲彩さん(M2)、田口輝希さん(M1)、黄新昊さん(M1)、深浦晴輝さん(B4)が、2022年2月16,17,18日に京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「論理・代数系・言語と計算機科学の周辺領域」にて研究発表を行いました。
それぞれの研究成果を発表し、他大学の研究者とともに意見交換を行いました。

今野咲彩さんは、「Left simple and left cancellative semigroups without idempotents」のタイトルで英語で発表を行いました。

発表の概略:
Left simpleでleft cancellative(right simpleかつright cancellative)な半群の構造はまだ明らかになっていないという事実を受け、その性質を持つ半群を構成しました。全射で任意の逆像の濃度が無限濃度となる写像を元とするidempotentを持たない半群を構成し、それがLeft simpleでleft cancellativeであることを発表しました。1932年にR.BaerとF.Leviが、単射の写像を元とするidempotentを持たない半群(Baer-Levi半群)を構成しており、それと同型であるかどうかの確認が現在直面している困難となっています。

田口輝希さんは、「Correspondence between down-up alternating permutations and increasing 1-2 trees」のタイトルで発表を行いました。

発表の概略:
encoding sequenceを用いたdown-up alternating permutationとincreasing 1-2 treeの対応関係の証明や具体例、アルゴリズムを、Euler number、Entringer number、Entringer familyとの関係を交えつつ紹介した。また、そこから発展するこれからの研究目標も紹介した。

黄新昊さんは、「Slightly Improved Dynamic Algorithm for LIS」のタイトルで発表を行いました。

発表の概略:
今回のRIMSで最長増加部分列に対する近似アルゴリズムをテーマに発表しました。LIS問題とDynamic Settingの定義から、既存の近似アルゴリズムと近似問題Extended Grid Packing問題を紹介し、新たな近似度が高い方法を導入しました。そして、再帰的データ構造を用いてLISの近似解を計算します。これからは、新しい方法についてのUpdate Timeなどを確認して、アルゴリズムを練り直します。

深浦晴輝さんは、「Diagrams over groups and small cancellation conditions」のタイトルで発表を行いました。

発表の概略:
発表の内容は、Ol’shanskii著, Geometry of Defining Relations in Groupsの最初の方をまとめたものである。最初に帰結の導出の可視化であるdiagramの例を挙げて定義を述べたあと、帰結とdiagram の対応を述べたvan Kampenの補題を紹介した。次に表示の制限であるスモールキャンセル条件を導入し、それがdiagramにどう作用するかを説明し、ある程度強い条件満たすときのdiagramの特徴を述べた定理の証明を簡単に紹介した。最後に群のword problemを紹介し、スモールキャンセル群のword problemを解くDehnのアルゴリズムを構成した。

参加・研究発表の感想:
今野咲彩
私は学会で数学の内容を発表したことは初めてで、研究者の方々に向かって発表するのはとても緊張しました。毎日の活動では現在直面している困難にばかり目を向けていましたが、発表を通して研究の出発点に目を向ける必要性を感じました。そもそもなぜLeft simpleでleft cancellativeな半群の構造は研究されてこなかったのか、構成したものは予想と照らしてどうだったのか、idempotentがあるとどうなるのかなどの質問を受けました。研究の土台や基礎の部分に目を向けて修士論文を書き上げたいと思いました。発表者の中で、自分が留学に行った際にお世話になった先生や、秋田に留学しに来ていた方もおり、研究集会の中で交流ができたことや、半群論に関する研究発表を聞いて理解できる部分があったことは嬉しかったです。
田口輝希
発表した感想としては、初めての研究発表、それもオンラインということで、スライドの準備や表現、時間の調整や発表練習もとても大変で本番も緊張したが、いい経験になった。発表時間に対し内容を詰め込みすぎてしまったので、次回の研究発表の際はその点に気を付けたい。他の発表者の講演を聞いた感想については、自分の理解できる内容、複雑な内容等様々だったが、全体を通して発表そのものの流れやスライドの作り方などの参考になる部分が多く、これからの発表で取り入れていきたいと思った。今回は日本語での発表になったが、英語での言い回しや表現を学び、次回は英語で発表ができるように努力したいと思う。
黄新昊
初めてRIMS共同研究に参加しましたので、論理・代数系の発表を伺うことができ、大変勉強になった。この発表を通して、限られた時間の中で自身の研究成果を他者に分かりやすく説明することの難しさを実感することができ、とても良い経験になったと思います。また、他の人の発表や質問からで自分にはない考えを得ることができたことも、見つかったことも大きな成果だったと思います。
今後ともこの貴重な場に参加できるよう研究に励み、自分の説明能力を上昇し、そして、様々な考えや意見をいただいたことが発表会での大きな収穫でありました。
深浦晴輝
今回の発表は自分にとって初めての学術発表であり、大変多くのことを学ばせていただきました。発表後、スライド内の図について質問を頂きました。図の制作には力を入れていたので、触れていただけて嬉しかったです。同じ本を読んだという方からは、より深い内容で補足のコメントを頂き、非常に勉強になりました。他の方の発表では、数名がword problemについて触れていました。自分が学んでいる内容が実際に有名なものであることが実感でき、全く異なるアプローチを知ることができて理解を深めることができました。今読んでいる本の内容を今後研究していく上で、大きなモチベーションとなりました。今回、このような貴重な体験をさせていただけたことを感謝しております。

オンライン留学(国立台湾大学)報告(山村研究室 佐藤優樹)

2021年12月にNational Taiwan University(国立台湾大学)主催のオンライン講座(Fundamentals and Applications of AI Online Program)に今野咲彩さん、深浦晴輝さん、佐藤龍之介さん、清水康平さん、田口輝希さんと参加しました。オンデマンド型の講義で、AIについて学びました。
基礎理論から始まり、現在注目されている画像生成などの応用例について知ることができました。また実社会での応用としてドローンの自動操縦、建築現場での安全検査へのAI応用を学ぶことができました。オンデマンド型ということもあり、英語が苦手な僕でも何回か見直すことで問題なく受講することができました。英語はもちろんのことAIの知識も含めて、研究活動や就職活動に活かせる貴重な経験ができました。

佐藤優樹

 

 

「奥羽越素粒子研究会」参加報告(理論物理学研究室 湯本純)

標記の研究会にて、同研究室の湯川大地(博士前期課程2年)君と私、湯本(博士後期課程1年)が口頭発表を行いました。
今回は昨今の状況を踏まえ、2021/11/27-28にオンライン上での開催となりました。当研究会にて、湯川君は「基本表現と随伴表現を含む$R^{3} \times S^{1}$上の$SU(3)$ゲージ理論の閉じ込め相転移」、私は「グラフ理論に基づいた格子Dirac演算子の新たな解析法と$S^{4}$上における格子fermionの解析」というタイトルで発表しました。

研究会参加の所感【湯川君】

今回、初めて研究会で発表させていただきました。この研究会には昨年も参加させていただきましたが、その際には聴講のみでした。昨年は多くの方の講義や研究発表を受けて、様々な知見を得ることができました。
今年は、同世代の学生と研究発表を通じて関わることができたことで、昨年とは違った感想を持ちました。私が調べていることに関わる研究発表もあり、自分の専門について知見を深める機会になりました。同じような分野を学んでいる同期が学内にはいなかったため、発表を聞き、とても刺激を受けることができました。修士論文の作成に向けて、以前よりも前向きな姿勢で行っていこうと思います。

研究会参加の所感【湯本】

この度の研究会に於いては、今年度の前半期で発表していた内容(グラフ理論に基づく格子Dirac演算子の解析法)に加え、新たに得られた結果(4次元球面上の格子fermionの解析結果)も発表しました。質疑応答の際に、本研究の核心となる部分に関する質問や技術的な部分に関する質問を頂いたことで、改めて自身の研究を俯瞰し、横たわっている課題の根幹を再認識しました。さらに発表に際しての改善点を浮き彫りにすることができ、私にとって有意義な研究会となりました。

星魁人君(山村研究室・2020年3月修士課程修了)が論文「 Automata with One-way Jumping Mode」を発表しました

 2020年2月に開催された研究集会「代数系、論理、言語と計算機科学の周辺Ⅱ」において講演した内容をまとめたもので、星君のこれまでの研究をまとめた内容です。

Automata with One-way Jumping Mode
Kaito Hoshi, Akihiro Yamamura, Szilard Zsolt Fazekas
数理解析研究所講究録 2188巻 (2021) pp. 125-130
https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/2188-19.pdf

 

星魁人君(山村研究室・2020年3月修士課程修了)が関わった研究論文が Theoretical Computer Science に掲載されました

 国際研究集会「The Fourteenth International Frontiers of Algorithmics Workshop (FAW 2020)」において発表した内容をさらに発展させてジャンピングモードを持つ2方向オートマトンの計算能力について解析しました。

Two-way deterministic automata with jumping mode
Fazekas S.Z., Hoshi K., Yamamura A.
Theoretical Computer Science 864 92 – 102 (2021)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304397521001079

星魁人君(山村研究室・2020年3月修士課程修了)が関わった研究論文が Natural Computing に掲載されました

 国際研究集会「The 25th International Workshop on Cellular Automata and Discrete Complex Systems (AUTOMATA 2019) 」において発表した内容をさらに発展させてジャンピングモードがオートマトンに与える能力について解析しました。

The effect of jumping modes on various automata models
Fazekas S.Z., Hoshi K., Yamamura A.
Natural Computing (2021)
https://link.springer.com/article/10.1007/s11047-021-09844-4

第66回「原子核三者若手夏の学校」参加報告(理論物理学研究室 湯本 純)

博士後期課程1年の湯本です。標記の研究会にて口頭発表を行いました。

原子核三者若手夏の学校とは、毎年夏に開催される素粒子・原子核・高エネルギー各分野専攻の大学院生を対象とした1週間程度の滞在型研究会です。今年は昨今の状況により、2021/8/6-10にオンライン上での開催となりました。
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~sansha.wakate/school2021/index.html

発表概要

今回の夏の学校では、「Spectral graph theoryを用いた格子Dirac演算子の新たな解析法」と題して、三角樹弘氏(近畿大)との共同研究の内容を発表しました。これまでの研究でspectral graph theoryから着想を得た新たな格子fermionの解析方法を確立し、この解析方法は次のステップの研究に有用であることを示すことができました。今回の発表では、この解析法によって得られたnaive fermionとWilson fermionの結果は従来の結果と無矛盾であることを示し、さらに中身の詰まった4次元球体上における格子fermionの解析結果を発表しました。

講演スライドの「Background と Table of Contents」

夏の学校参加についての所感

夏の学校への参加は、今回で2回目になります。前回は私が博士前期課程1年の時で、当時は発表できる内容などありませんでしたので、友達作りの良い機会という軽い気持ちで参加しました。前回は現地開催だったため、他大学の学生と寝食を共にし、対面による講義や学生の口頭発表及びポスター発表、さらに囲む会と呼ばれる対面での交流の機会がありました。そこでは夜分遅くまで、年の近い学生と物理学に関する議論だけにかかわらず、同じ学生としての共通の話題で話が弾むこともありました。この研究会を通じて、現在でも連絡を取り合い、自主ゼミを行ったりする友人も作ることができ、私の大学院生活の中で大きな影響を与えてくれた有意義な研究会でした。

今回は昨今の状況もあり夏の学校史上初のオンライン開催でしたが、オンラインによる懇親会なども用意してくださったので、前回と同様に学生同士の交流が盛んにあり、私も他校の先輩や後輩の知り合いを新たに作ることができました。今回は有難いことに発表できる程度の研究内容もあり、口頭発表を行うことができました。発表後も興味を持たれた方から質問や疑問をいただき、今後の研究の良い刺激、また新たなインスピレーションを得ることができました。

今回はオンライン開催ということもあり、学部生や修士課程の学生の参加が多く感じられました。同期の学生の発表や交流、また今後の研究の刺激にもなる貴重な研究会ですので、皆さんもぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 

普段の研究の様子の紹介

 私が研究している「射影平面」と呼ばれる幾何対象を理解するために役立つ模型を動画で紹介します。
今回動画で紹介するのは、Boy曲面と呼ばれる曲面内の three-bladed propeller の近傍を表現した模型です。
Boy曲面は射影平面と呼ばれる幾何学において重要な曲面を3次元空間で目に見える形にしたものです。
射影平面は3次元空間に実現できない曲面なので、本来なら目に見えない図形ですが、Boy曲面は3次元空間で可視化したいという願いを叶えた曲面です。
このBoy曲面の理解の鍵となるthree-bladed propellerとはこの模型の中心線のことで、これは3枚の羽がついたプロペラのように見えることから、このように呼ばれます。
この模型はBoy 曲面の骨組みを表していて、中心点から出発して赤と青の細⻑い帯が3枚の羽をそれぞれ1回ずつ通るように1周し、2周目は1周目の帯に直交するように通り、出発点の中心点に戻ってくるように作ってあります。この模型に4枚の円板を貼るとBoy曲面になります。
 私が研究対象としている図形は目に見えない抽象的な図形なので、想像することが難しく、理解することはとても難しいのですが、自らの手で模型を作ったり、コンピュータで図を描画したりするなどして、自ら理解の手助けをしています。特に、模型を作る際には、図形がどのように作られているかを考えながら製作することで、図形が数学的にどのように構成されているかを理解することができます。このように、可視化できるようになることはとても面白く、日々楽しく研究に取り組んでいます。

博士前期課程2年次 板鼻佑奈

three-bladed propellerの近傍を表現した模型の紹介

数理科学コースで自分の目標にチャレンジ

 私は競技プログラミングのサイトで競技プログラミングをしています。2年生の春に授業でC言語を学んでいた時に友人に誘われたのがきっかけです。このサイトのコンテストでは, オンラインで出された課題に対して, 解いた数と時間を競います。
 今回私は, 私と同レベルの初心者が競い合うトーナメント式のコンテストに参加し, 決勝戦に進むことができました。残念ながら対戦相手に敗れ, 準優勝という結果になりましたが, 自分の実力が試せたこと, 成長が感じられたこと, 課題が見えたことなど, 良い経験になったと思います。
 数理科学コースでは, 自分の選択で様々なことにチャレンジする時間があると思います。専攻の数学以外でも何かにチャレンジしたいと考えているのであれば, 自由度の高い数理科学コースに来てみてはどうでしょうか。

4年次 大塚楓太
ABCトーナメント(AtCorder主催)準優勝 2021年4月

国際研究集会「The Fourteenth International Frontiers of Algorithmics Workshop (FAW 2020)」で学生が貢献した研究発表を行いました

国際研究集会「The Fourteenth International Frontiers of Algorithmics Workshop (FAW 2020)」(10/19-21, Haikou Hainan)において、星魁人君(山村研究室・2020年3月修士課程修了)が貢献した研究の発表を行いました。

「Two-way jumping automata 」というタイトルで2方向にテープヘッドがジャンプを許して動くオートマトンの言語受理能力とそのクラスの性質について国際研究集会 FAW2020(コロナウイルス感染症の影響でオンライン研究集会として開催)で研究発表を行いました。アルゴリズムに関する研究者が集まりインターネットを通して活発に討議を行いました。
修士課程を修了した星君は、オートマトンと形式言語理論に関する研究を実施し今回の研究発表に貢献しました。

研究成果は以下の論文に掲載されました。
Two-Way Jumping Automata,
Szilard Zsolt Fazekas, Kaito Hoshi, Akihiro Yamamura,
Frontiers in Algorithmics,
Lecture Notes in Computer Science,
Springer-Verlag Vol. 12340 pp. 108 – 120 (2020)