オンライン研究生活(数理科学コース教員・新屋良磨)
私の専門である計算機科学の分野では、世界中から研究者が集まり講演・議論する場となる「国際会議」に論文を投稿して採択されることが重要視されています。2020年度は私は2本の研究論文が国際会議に採択され、またその他にも2つの国際会議で招待講演とチュートリアル講演を行いました。本来であればそれぞれアメリカ・オーストリア・イタリアで開催されていましたが、この様な状況なので全てオンラインでの開催ということになりました。世界中の色々な国で開催される国際会議に参加して様々な研究者と議論する、これは大変刺激的で研究者という職業の大きな魅力の1つだと思います。そのため、移動が大きく制限されたこの様な情勢は一刻も早く改善してほしい一方、この様な情勢だからこそオンラインでのミーティングツールが進歩を遂げ、オンラインで開催される国際会議の質も向上しています(オンラインで「懇親会」をする会議も最近では増えてきています)。
オンラインでの発表を録画しYoutubeなどで公開する国際会議も増えてきています。例えば“ICFP 2020”とYoutubeで検索すると(関数型)プログラミング言語のトップレベル国際会議であるICFPの昨年の講演動画がいくつも出てくるはずです。話してる内容はわからずとも、研究者達がどのように講演したり議論しているか、雰囲気だけでも感じられると楽しいかもしれません。
国際研究集会 Computational Logic and Applications 2020 での新屋のチュートリアル講演の様子
(オーストリアでの開催予定がオンライン開催に変更)
講演動画をいくつか見てみると研究者たちはそれぞれ特有の「訛り」があることにすぐ気づくと思います。世界中から研究者が参加しているため、当然それぞれの国の言語の発音やアクセントが英語にも反映されるわけです。英語が母語ではない色々な国の人達と交流していると「流暢に英語を話す」よりもしばしば「伝わりやすい英語を話す」ことが重要です。最近では講演中にリアルタイムで音声認識・機械翻訳して母国語の字幕を自動生成するツールが出てくるなど、テクノロジーによって「言語の壁」を気にしなくて良い未来に進んでいっている気がします。オンライン国際会議に参加していると「言語の壁」はテクノロジーである程度克服できると感じてきた一方、「時差の壁」はなかなかに高い壁であることに気付かされます。
オンライン化によって「どこからでも国際会議に参加できる」という利便性は格段に上がりましたが、時差の壁によって「日本時間の夜11時(中央ヨーロッパ時間の午後2時)にオンラインで講演する」などが当たり前のように起こります。とはいえ、やはりオンラインは便利で(さらに今年度は研究成果がタイミングよく色々出たこともあり)例年よりも多くの国際会議・国内会議に参加し講演・議論させていただいた充実した1年になりました。
みなさんも数理科学コースで数学・物理・計算機科学を学び、研究者の卵(大学院生)や研究者を目指してみませんか?自分で考えた定理や理論を世界中の人達に知ってもらうのはとても刺激的ですよ。
(「インテグラル」Vol.8 2021年4月1日発行)