生命の連鎖、生きているということ(数理科学コース教員・河上肇)
【以下、歴史について断定的に書いているのは、正確には「…. だそうです」です。】
宇宙が誕生したのは今から約138億年前(それ「以前」って?)、地球が誕生したのは約46億年前です。地球上に生命が誕生したのは少なくとも38億年前、以後途切れることなく生命の歴史は続いて来ました。その間、生命は何度も大きな危機に出会いました。今から約22.5億年前、7億年前、6.5億年前には全球凍結が起こりました。カチンコチンです。赤道地帯まで氷に覆われてしまい、多くの生命が死滅しました。全球凍結後も(ガスキアス)氷河時代が訪れ、それが終わった5.8億年前、複雑な構造を持った生物が登場し、カンブリア爆発につながります。ピンチの後に進化あり、です。生物の構造は爆発的に多様化し、三葉虫などは眼を獲得します。アノマロカリス、ハルキゲニア、オパビニア、・・・いいですねえ。
しかし、その後現在に至るまで、生命の大半が滅亡する大量絶滅が5回も起こります(ビッグファイブ)。特に2.5億年前のペルム紀末の大量絶滅は最大規模で、全ての生物種の90%以上が絶滅しました。それに続く三畳紀末(約2億年前) にも大量絶滅が起こり、ジュラ紀に至ります。その間、哺乳類(の祖先の単弓類)は恐竜の繁栄の傍らで、生命を繋いで行きます。ペルム紀に30%以上に達した酸素濃度はジュラ紀には 12.3%まで下がり、一方、二酸化炭素濃度は5%以上でした(現在は約21%と0.4%)。現在の鳥類に繋がる恐竜の呼吸システムは、この環境に適合して進化し繁栄をもたらします。ティラノサウルス、スピノサウルス、アルゼンチノサウルス、・・・見てみたいですね(いきなり出くわすのはゴメンですが)。しかしその恐竜も白亜紀末(約0.65億年前)に鳥類を残して絶滅します。直径10km程度の小惑星が地球に激突したのが原因です。当時の生命にとってそれは大惨事でしたが、恐竜がいなくなったおかげで、哺乳類の繁栄が始まります。そして現在、これを読んで下さっている貴方がいる、というわけです。こうして振り返れば、「今生きている」と言う事は、多くの奇跡の積み重ねの結果であり、かけがえのない事ですね。(ところで現代は、氷河時代だそうです。間氷期ですけど。)
物事は「原因 → 結果」の順で進みますが、過去を調べるのは逆向きの「結果 → 原因」です。この種の問題を「逆問題」と言います。上村豊著「逆問題の考え方」(講談社ブルーバックス) には、恐竜を滅ぼした小惑星の衝突位置と大きさに関する逆問題の物理学的、数学的考察が紹介されています。数理科学の出番です。その内容は・・・(文字数超過のため終了)。
(「インテグラル」Vol.6 2019年4月1日発行)