研究詳細(河上 肇)

 主に逆問題を研究しています。例えば, スイカの中がどうなっているか分かっていれば、叩いた時どんな音がするかは計算で分かります。でも, 叩いた音からスイカの中を推測するのは難しい。前者は順問題の例で, 後者は逆問題の例です。私は, 逆問題の中でも, 主として「未知の形を推定する逆問題」を数学的に研究しています。(理論的な事だけで無く、コンピューター・シミュレーションもしています。) 逆問題は, データから未知の何かを推定する問題なので, データサイエンスとも深い関係があります。近年は, データサイエンスにおける重要な方法であるベイズ推定法も用いて、上記の逆問題を考察しています。また最近、磁石の内部の状態を調べる逆問題に、人工ニューラルネットワークを適用してみました(大学院生との共同研究です)。

 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022247X20300652
 https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/17415977.2021.1905637

 人工ニューラルネットワーク (ANN) は, AI (と呼ばれるもの) の代表のひとつとして知られています。ANN は, 多くの場合, データを用いて作ります(いわゆる深層学習, deep learning)。ANN 以外にも, データを用いて作られる AI はいろいろあります。これらの AI をデータを用いて作ることを「機械学習」といいます。機械学習(による AI の作成) は逆問題の一種であると考えることができます。最近は、私も機械学習に関心を持っています。(上記の磁石の場合は, 磁石逆問題を解くために, ANN を作るという逆問題を扱いました。逆問題が 2 段になっています。)

 私の研究では, 数学的ツールとして, 積分とそれを基礎とする確率論(ベイズ推定法は確率論における推定方法のひとつです)を主に使っています。その際用いる積分(ルベーグ積分)と高校で習う積分(リーマン積分)を図にすると,下のような感じです。