地球科学とデータサイエンス

1. 地球科学とデータサイエンスの繋がり

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 みなさん、数理科学コースの中になぜ地球科学分野があるのか???と思いになったでしょう。高校までの授業科目は数学、物理、科学、生物、地学などに分かれています。
高校までにこれらの科目を学ぶことは、ロールプレイングゲームで言うならばレベルを上げて装備を整えることに当たります。
地球科学は過去・現在・未来の地球に関する全ての現象を相手にする複合的な研究分野であり、このような複雑な対象を研究するには先ほど挙げた全ての科目の知識や技術を利用する必要があります。
大学で学ぶ地球科学は決して暗記科目ではなく、雄大で美しく複雑怪奇な自然現象を観測・定式化・モデル化によって理解することが重要です。
物理探査データ、化学分析値、画像データなどの数値から自然現象の背後にある物理化学プロセスを理解するためには、数理科学の知識や技術は必要不可欠となります。これが地球科学分野の教員も数理科学コースに所属している理由となります。

 数理科学と地球科学の協働は新しいものではありませんが、近年発展の目覚ましいデータサイエンスの解析手法群は盛んに地球科学へ応用されています。
地球科学と言っても地質・地震・火山・古生物・大気・海洋など対象は多岐にわたり、今後更にデータサイエンスという”武器”を使った研究が重要となるでしょう。
数理科学コースに在籍し、数学やデータサイエンスをしっかり学び、地球科学の課題に挑むユニークな学生生活を過ごしてみてはいかがでしょうか?

2. 研究紹介

機械学習の手法を利用した研究やアウトリーチ活動の例をいくつかご紹介します。

岩石種の画像分類

河原に落ちている石ころに目を落としたことはありますか?多くの人はその石がどのような種類の石で、どのように形成されたかについて知る人は少ないと思います。
地質学者のフィールドワークにおいて、河川に転がる石は上流の地質を教えてくれる重要な情報となります。
地域の研究普及活動において子供たちが転石の標本採集を行うこともありますが、石の種類の判別は意外と難しかったりします。
そこで身近な石が一体どのような石か知ってもらう第一歩として、スマートフォンの写真から岩石種を判別するモデルの作成に取り組んでいます。
機械学習の手法である畳み込みニューラルネットワークを利用して、画像分類を行う研究となります。

CNN

化学組成を用いた鉱物の形成環境推定

岩石の構成要素である鉱物は化学組成や同位体組成にその形成時の情報を保持することがあります。
特に鉱物中の微量元素濃度は形成プロセスや共存鉱物の種類によって大きく影響されることが知られています。
このことを利用して、鉱物1つ1つの化学組成から形成時の環境を推定することができます。
例の1つとして、モナザイトという結晶化年代を測定できる鉱物に着目して微量元素からその起源を推定する研究があります。
分類指標の確立を目的に、ここでは多項ロジスティック回帰という手法を用いています。
また、報告されるデータの数に限りがあることも考慮して、機械学習でよく使われる交差検証を用いて判別性能を定量的に評価することも行っています。

MLR

3. 学生生活

学部・大学院において数学やデータサイエンスについての基礎を身につけたのち、
研究室のセミナー活動を通して地球科学の専門的な知識や技術も身につけることができます。
本コースには地球科学を研究のバックグラウンドに持つ教員が2名おり、特に固体地球科学がメインターゲットとなります。
マグマ学、岩石学、ガラス工学、地球化学、年代学、放射性同位体学などにも興味がある人に最適な研究環境ですので、興味がある方はぜひコンタクトをとってみてください。

教員紹介:
http://mathsci.math.akita-u.ac.jp/staff/