研究詳細(三角樹弘)

0. 物理学の魅力

この宇宙で起こる物事は,すべて何らかの法則に従っていると考えられます。
どんな物でも細かく見ると分子・原子から出来ており、それらの振る舞いは「量子論」とよばれる”小さい”物の動きを司る法則に従っています[図1,2参照]。
一方、宇宙空間において星やそれを包含する銀河の振る舞いは「一般相対性理論」とよばれる”大きい”物の動きを司る法則に従っています[図1参照]。
実は、私を含む素粒子物理学者と呼ばれる人たちは、一見異なるように見えるこれら2つの法則も実は1つの法則の異なる見え方だと考えています。このような法則は「万物の理論」(Theory of Everything)と呼ばれ、全ての現象は一つの方程式に基づいていると期待されます。このように,自然現象の背景に存在する普遍的な規則や方程式を見つけ出すことが物理学の一つの目標です。
一方、単純な規則から生命のような多様性が生み出される理由を考えるのも物理学の魅力的な問いです。私はこれらの問いに答えることを最終目標として,自然を構成する最小要素を探求する「素粒子論」の研究を行っています[図3参照].

図1:自然を司る量子論と一般相対性理論

図2:量子論の特徴.粒子の位置や速度があやふや(上図).
真空中に仮想的な粒子対が出現(下図).

図3:現在知られている素粒子の種類[KEKホームページより]

1.量子論における摂動計算と非摂動現象

微小世界を記述する理論である量子論においては、しばしば摂動計算と呼ばれる計算手法が用いられます。ところが,物質の構成要素であるクォークが関わる現象はこの方法が適用出来ず,それらの現象は「非摂動現象」と呼ばれてきました.近年、摂動計算と常微分方程式の解法の一種(リサージェンス理論)を組合せることで,非摂動現象を調べられることが分かってきました。この手法は,図4に示す「ソリトン」と呼ばれる特殊な対象と密接に関わっており,私は特にその点に着目して研究を進めています。

図4:複合ソリトン配位の例
[T.Misumi,M.Nitta,N.Sakai,JHEP09(2015)157)より]

2.ゲージ場の量子論の相構造と閉じ込め

現在実験的に知られている全ての素粒子は,ゲージ場の量子論と呼ばれる理論によって記述されます.これによって記述される世界がどのような性質を持つかは,理論に含まれる粒子の質量や相互作用の強さなどのパラメータによって大きく変化します.それを理解するには水の三態でもお馴染みの相構造[図5参照]を知る必要があり,これは素粒子現象だけでなく宇宙開闢以降の歴史を理解する上でも重要です.私は,ゲージ理論特に原子核の形成に関わる量子色力学の相構造[図6参照]を調べています。

図5:量子色力学で予想される相構造
[筑波大学ホームページより]

図6:特殊な時空におけるゲージ理論の相構造
[T.Misumi,T.Kanazawa,JHEP06(2014)181より]

3.離散時空における超対称ゲージ理論の厳密解と数値計算

現在知られている素粒子標準模型の背景には,より美しい構造を持つ理論が存在すると信じられており,その候補の一つが超対称ゲージ理論です.この理論は高い対称性を持つため,ある種の物理量については厳密に解ける場合もあります。私は,離散化された時空上の超対称ゲージ理論の性質を,厳密解の導出や数値計算に基づいて調べています[図7参照]。
この研究は超対称性を持つ弦理論いわゆる超弦理論を理解する上でも重要になります.

図7:離散化された時空における超対称ゲージ理論の図示化
[S.Matsuura,T.Misumi,K.Ohta,PTEP(2015)033B07より]

4.新しい格子離散化法に基づく格子シミュレーション

摂動計算を超える場の量子論解析法の枠組みの1つとして格子ゲージ理論があります。この理論では時空間を離散化し、格子点やそれらを繋ぐ線上に自由度を定義します[図8参照]。
解析計算はこの場合も難しいですが、モンテカルロ法と呼ばれる統計的手法を用いた数値計算が有効であり、多くの成果を上げています。
一方、離散化の結果としていくつかの問題点も生じます。私はこの問題点を解消する格子模型を提案し、その模型に基づく数値シミュレーションを行っています[図9参照]。

図8:格子ゲージ理論の概念図

図9:Z3-QCDと呼ばれる格子模型の数値計算結果
[T.Iritani,E.Itou,T.Misumi,JHEP11(2015)159より]

三角樹弘 略歴
2007年 東京大学理学部物理学科卒業
2012年 京都大学大学院 理学研究科 博士課程修了 博士(理学)
2012年 米国ブルックヘヴン国立研究所博士研究員
2013年 慶應義塾大学日吉物理学教室 助教
2015年 秋田大学大学院理工学研究科 専任講師

リンク先
詳細を知りたい方は以下の業績一覧や研究室ホームページを参照してください.
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三角グループ(研究室)
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